大判例

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東京高等裁判所 平成11年(う)903号 判決

被告人 鹿島正美

〔抄 録〕

第一 訴訟手続の法令違反の論旨について

論旨は、要するに、原判決は、刑訴法三二三条一号、二号書面と同程度にその作成及び内容の正確性について信頼できる書面ではないのに、小熊邦夫作成の望月光利経緯メモ(甲三二号証、以下「本件メモ」という。)を同条三号書面として採用した点において、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるというのである。

小熊邦夫の原審証言及び本件メモ等関係証拠によれば、さくら銀行が行うローン等の保証を業務としていた原判示東日本総合信用株式会社(以下「東総信」という。)の保証部部長であった伊関俊二と実査部副部長であった被告人は、平成七年一月二〇日、被告人が紹介した顧客である望月光利が前年一一月一五日に原判示さくら銀行関内支店に打診した住宅ローンの申し込みが断られた経緯を確認するために同支店に赴いたこと、応対した同支店融資課課長小熊邦夫は、後日望月からクレームがついてトラブルが起きる可能性を危惧したところから、右打診があった時点から、同支店内の稟議を経て東総信に住宅ローン申込書を送付して東総信の保証が得られるか検討を依頼し、平成七年一月一九日東総信実査部副部長中澤から電話で最終的に保証を断られ、望月に対して右ローンの申し込みを断るに至るまでの経緯を同支店内の記録として残すため、その都度、あるいは融資課作成の営業日誌、小熊個人が大学ノートに記載していた備忘録や右住宅ローンの担当者菊地の記憶にも基づいて、B四版のけい紙に鉛筆で記載し、これをコピーしたものを原本とし、同支店長川端の決裁を経ていたものであって、右のようにして作成された本件メモは、同支店の文書としての体裁を備えており、全部で五枚あるうち、一、三、四枚目は、被告人らが来店した直後に急いで作成したもので、五枚目は、同月二三日にその後の望月側とのやりとりを記載して作成し、二枚目は、一、三、四枚目に記載を漏らした出来事を同月二七日ころに記載して作成したものであることが認められる。

所論は、本件メモは五枚であるのに、小熊は、全部で七枚メモを作成したと証言し、小熊の平成一〇年六月三日付け検察官調書(甲一四号証)添付のメモは三枚であって、このようにメモの枚数自体が明確でないことからも、本件メモの特信状況に重大な疑義があると主張する。しかし、小熊の原審証言によれば、所論の右検察官調書(原審で不同意とされたため取り調べられていない。)に添付されているメモは三枚であるとうかがわれるが、同証言及び本件メモの記載(特に五枚目末行)によれば、小熊は、検察官に、小熊が東総信の伊関部長にファックス送信し、その後東総信から警察に提出された本件メモの一、三、四枚目について事情聴取されたため、前記調書には右三枚だけが添付されたものと認められる。また、小熊は、所論指摘のように、いったんは同人が作成したのは七枚ぐらいであると思う旨証言したものの、その直後に自ら作成したのは本件メモ五枚だけであることを確認し、これと区別しつつ、菊地が独自に作成したものはなく、前記支店の副支店長が電話その他で受けたものを作成したメモもある旨証言しているのであって、本件メモの作成過程に格別疑問があるとは認められない。

以上によれば、本件メモは、小熊課長がその業務遂行の必要上、日常業務の過程で作成された関係資料等をも参酌して作成し、上司の決裁も経た前記支店の正式文書としての体裁を備えたものであって、その作成経過・状況、作成目的、形式・体裁及び記載内容等に照らすと、営業日誌や備忘録を転記するなどした点で二次的資料といえる部分や、作成日から約二箇月前のできごとを記載した部分があること、原資料である営業日誌や備忘録が既に廃棄されていること、所論がいうように、将来のトラブルの発生に備えて作成した点で防衛的な配慮が入り込んでいる可能性があること、本件メモの二枚目には作成日付けがないことなど所論の指摘する諸点を考慮しても、特に信用すべき情況の下に作成された書面というに妨げなく、原審が本件メモを刑訴法三二三条三号に該当する書面としてその証拠能力を認めたことに違法があるとは認められない。

(龍岡資晃 植村立郎 川上拓一)

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